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実績

 
2010年度実績

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第1回  2011.1.6(木)

1:オープニング
2:戦略/デザイン戦略    大澤隆男(株式会社日立製作所)

2011年になって早々の1月6日にデザイン・ツールズの第2期はスタートしました。
第1期同様、東京都の主催者挨拶に始まり、この講座についての説明、受講生20名の自己紹介へと続きました。
第2期はデザインマネージャー向けの講座。自分自身のスキルアップだけでなく、組織やチームのパワーアップを参加の目的とした受講生が目立ちました。名古屋などの遠隔地からの参加や第1期から引き続き受講する人など、ユーモアの中にも意気込みが感じられるコメントばかりでした。

第2期最初の講義は、日立製作所デザイン本部本部長の大澤隆男さんによる「デザイン戦略」。
大澤さんは最初に「戦略とは目指す理想を勝ち取るための筋道を描くこと」と定義付けました。そして「客とライバルと自身を知ること」、その上で企業におけるデザインの役割の変化を認識し、「実行計画を立て、PDCAを回し、進化し続けること」について詳しくお話されました。
一般論に加え、日立で行われている多くの実例も数多く紹介。有形資産に代わり無形資産が企業価値の大半になった現状に即して、デザイン力に求められるものが時代とともに大きく変化している具体例、現在取り組んでいる「日立エクスペリエンスデザイン」のこと、創造性の源泉として「対話」を重視した職場作りなど、どれも興味深いものでした。紺野さんの講義と関連のある内容でもあり、第1期から引き続き受講している人にはより深味のあるお話になったのではないでしょうか。
最後に、「HOWのデザインからWHATのデザインに挑戦すべき時を迎えている」と締めくくった2時間以上の講義、受講生からは「あんなに社内のことを話して頂けるとは思わなかった」との意見が出るほど、この場でしか聞くことのできない内容が盛り沢山でした。
講義終了後は、大澤さんも含めて参加者みんなで軽い交流の場を持ちました。
初回にもかかわらず皆うち解けて、飲み物と軽食を手に盛り上がった会話は予定時間を超えて続きました。

第2回  2011.1.13(木)

1:戦略/事業戦略    御園秀一(株式会社テクノアートリサーチ)
2:戦略/経営戦略    長野宏司(日産自動車株式会社)

2回目の講義は御園秀一さん。トヨタの事業戦略についてのお話を伺う予定でしたが、冒頭「トヨタ社内で以前は“戦略”などと言う言葉は聞いたことが無かった。“カリスマ”と呼ばれる個人が全てのヒット商品を生み出してきた」と切り出し、テーマとは逆の展開に受講生も一瞬戸惑った様子。しかし、すぐに「ただし、皆のベクトルを合わせるために“戦略”は重要な役割を果たしている。トヨタでも2000年頃から会社全体の個性(例えば欧州メーカーのような)を出そうとしきりに使われるようになった」と続きました。
その後は、プリウスを例にした自動車のプロポーションと技術について、HV(ハイブリッド車)とEV(電気自動車)の比較とトヨタの取り組みについてなど、まさにトヨタの事業戦略の実例の話が続きました。
ところが、最後にもう一度、「“戦略”から生まれた名車など無い。アッ!と言わせる思いがけない発想はいつもデザイナーの“感”から生まれる」と御園さん。戦略よりもデザイナー自身の資質の向上が重要だと語ります。そのために、デザイナーはいつも「意(Will)」と「匠(Skill)」を磨くこと。そして、企業のトップに未来を提示できる力、ビジネスとしての可能性についてトップを説得できるだけの実力をつけることが重要であると締めくくりました。高い理想ですが、これは御園さんならではのデザイナーに対する応援メッセージに他なりませんでした。

後半は日産自動車の長野さんから「経営戦略におけるデザインの役割およびマネジメントについて」の講義。お話の中心は1999年にカルロスゴーン社長が就任して、デザイン部署が経営戦略に大きな役割を果たすようになってからの内容です。守秘性が高いので配布資料こそ無かったものの内容は多岐にわたり、また前半の御園さんのお話との差を比較でき、非常に有意義なものとなりました。「戦略は組織をまとめるために方向性を示すもの」との認識だけは一致していたのが印象的でした。

講義終了後、御園、長野両氏が最後まで残ってずっと話し込んでいる様は、ライバルでありながらも、デザイナー同士の強いきずなが感じられる光景でした。

第3回  2011.1.17(月)

1:戦略/知財戦略    日高一樹(日高国際特許事務所)
2:戦略/視覚戦略    ウジトモコ(株式会社ウジパブリシティー)

前半は日高一樹さん。第1期では「権利を守る」ことを中心に講義をしていただきましたが、第2期では権利を「戦略的に使う」ことをメインにお話いただきました。
第1期で2コマかけて説明した内容を最初に触れた後、いよいよ本題に。他社の出願傾向をもとに「知財マップ」を作成してみると他社の動向が見えてくること(現在の商品をもとに判断するマーケティングよりも有効)、「知財マップ」を見れば無駄な開発コストを抑えられること、更に競合他社の動きをけん制するための出願方法などを、第1期同様、豊富な実例をもとにお話しいただきました。
日本では、まだまだ知的財産は「守る」ものだとの考えが強いが、知的財産を「武器として積極的に利用する」時代が来ていると、日高さんは話されました。

後半はウジトモコさん。少ない投資で大きな効果をあげる「視覚戦略」についての講義です。
視覚戦略においては3つのポイント、つまり「存在する(認知される)ことは、実存(実在)することではない」「視覚マーケティングでは先行者(認知される順)に利益がある」「差別化戦略とは程度問題ではなく、傾向としての差別化」を踏まえることが基本。「資産」になる視覚戦略を行う(グランドデザインを描く)ことが大切で、「負の資産」になってしまう視覚戦略をとらないように、と説かれました。そして、間違った視覚戦略の例を紹介し、どのような点に配慮して戦略を作れば良いかを具体的に説明して講義を進めて行かれます。視覚戦略に共通解は無く、最終的には自分が勝てるポイント(勝てるポジショニング)を自分で探し当てることだそうです。
最後に、視覚戦略の目指すところは「日々消費されてしまう販促ツールではなく、ブランディング」「今すぐ売れるための対策ではなく、将来に大きな実を結ぶための先行投資」であると認識ほしいと結びました。第1期同様、キレのある分かりやすい講義でした。

第4回  2011.1.20(木)

1:マネジメント/品質管理    渡辺慎二(株式会社東芝)
2:マネジメント/財務管理    和田隆志(和田公認会計士事務所)

本日は、本講座「デザイン・ツールズ」の前身である「スーパーデザイナー養成講座」でかつてご登壇頂いた講師お二人が久しぶりの登壇です。前半は渡辺慎二さん。デザインの品質管理について、データをもとに良いデザインが創出できるかを長い間研究し、東芝社内で実践してきた方です。東芝製品の国際競争力向上に向けて、かつての世界共通のブランド戦略から、現在の適材適所のブランド戦略に切りかえた背景を受けての講義です。
デザインの品質管理(品質マネジメント)の重要な要素は「Quality」「Speed」「Cost」。その内容や実行のプロセスを実例を交えて詳しく説明されました。講義後、受講生から「東芝では、このような所まで気を配って製品を作っているのか?」との感想が聞かれるほど、東芝ならではの興味深いお話でした。

後半は「財務管理」について、公認会計士の和田隆志さんが分かりやすく解説。財務については、知っておきたいけど何処から手を付けて良いのか分からず困っている、というデザイン関係者も多いはず。そんな気持ちを分かっているのか「受講生の皆さんが財務諸表を全部理解する必要はありません」「財務3表の見方だけを覚えれば十分です」と井上さん。それから、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の説明をし、必要な数字の読み取り方を実習も交えてじっくりとお話しされました。講義を終える頃にはスーッと頭に入ってしまう、とても整理された講義でした。

第5回  2011.1.24(月)

1:マネジメント/ブランドマネジメント    島田一郎(トリゴナルデザインシステムズ)
2:マネジメント/プロジェクトマネジメント    大松敦(株式会社日建設計)

前半は多くのブランディングを手掛けてこられた島田一郎さん。洋菓子の「アンリ・シャルパンティエ」を有名ブランドにした立役者です。ご持参いただいた豊富な資料に接しながらの講義となりました。
まず、ブランディングに必要な基礎的な内容について、トレンドの変化、製品と市場の関係性、マーケティングとブランディングなどを確認することからスタート。その上で、「ブランド構築の基本は時代価値を反映した製品力(お菓子なら美味しいこと、製品なら機能が優れていること)」とし、それを前提として「企業理念や目標を常に社員全員で共有していること」、「発信するメッセージとデザイン品質を統一しておくこと」、「ヒト・モノ・コト・バの関係性を常に考えていること」など、ブランディングの要点をまとめてました。また、「ブランディングはトップダウンで行うもの、トップの理解度が鍵になる」、それを引き出せるのは「熱意と誠意」しか無いともお話しました。
最後に「デザインの意味するもの、目ざすこと」として、島田さんが詠んだのが下記の言葉です。

 
美しい形は美しい作法を求め、
美しい作法は美しい心を育む。
美しい心は美しい形を求め、
美しい形は美しい作法を育む。

ブランドマネジメントにふさわしい、味わいのある授業でした。

後半は、第1期の「実施計画」でご講義頂いた日建設計のプロジェクト開発部門副代表の大松敦さんに再びご登壇頂き、「プロジェクトマネジメント」についての講義です。
まず、プロジェクトとは「独自(オンリーワン)の成果を創造するために行われる有期的(始まりと終わりがある)活動」であると定義し、マネジメントとは管理と同義語ではなくより動的イメージであることを解説、その上でプロジェクトマネジメントを「プロジェクトの事業主体の要求事項や期待を満足させるため、知識・スキル・ツールおよび技法を適用すること」としました。つまり、終わりの見えない事業や動き出したら修正がきかない事業はプロジェクトでは無いということです。
講義では、第1期でもお話頂いた「プロジェクトの3要素(時間、コスト、スコープ)」に、「品質」「人的資源」「コミュニケーション」「リスク」「調達」を加えた「プロジェクトマネジメントの知識体系」について、事例を交えて詳しくお話し頂きました。現在も続いている東京駅前の再開発や、講座の会場である東京ミッドタウンの建築計画などの事例紹介は受講生にとっては貴重な内容です。
多くの人が関わる巨大プロジェクトをどのように動かしていくのか、大松さんはプロジェクトマネジメントのポイントを「出戻りが少ないように計画に多くの時間を割くこと」「枠を超えて行動すること」「メンバーが主体的に参加できる環境を作ること」そして「人との出会いを楽しむこと」と結びました。

第6回  2011.1.31(月)

1:マネジメント/販売チャネルマネジメント    小林清泰(株式会社ケノス)
2:懇親会

今回の講師は、全国のコンビニやホームセンターなどの多くのチェーン店展開のデザインを手掛けている小林清泰さん。
良い店舗とは、お客様にとって快適であることばかりでなく、経営ツールとしてもバランスがとれていること、メディアとしてコミュニケーション力があることも重要だとのこと。特にチェーン店展開において、人、物、金、時を高い水準に保ってマネジメントするには「標準化」が欠かせないと小林さん。多くの店舗の実例をあげながらの解説は強い説得力のあるものでした。標準化が上手に機能しているヨーロッパの建材産業についても触れ、受講生は標準化の効果についてより理解を深めました。
広範囲にわたる販売チャネルをマネジメントするには全体像を把握することが最も大切で、そのためには製品開発の現場ばかりでなく、情報収集(目配り)とフィードバック(気配り)を常に心がける必要があります。ただ、最終的にプロジェクトを成功させるポイントは人。決定権を持った人と交渉し、自分も相手から信頼される人物像であることが鍵とのことでした。
講義の後、1時間ほどの懇親会を開催。小林さんを含め、参加者がお互いの理解を深める良い時間となりました。

第7回  2011.2.3(木)

1:パワーアップ/リーダーシップ    井上和幸(経営者JP)
2:パワーアップ/モチベーション    井上和幸(経営者JP)

今回から3つ目の柱である「パワーアップ」の講義に入ります。講師は、この分野で多くの経験を持つ、経営者JP代表取締役の井上和幸さん。本来なら2日間かかる内容を3時間に圧縮しての濃密な講義です。
前半は「パワーアップ」。井上さんはリーダーシップを旅に例えました。「夢(行きたい処)があり、一緒に旅をする仲間を募る力(夢に共感させる説得力)があり、目的地まで旅を続ける力(統率力・信頼感)がある」こと。そしてその内容を一つずつ解説していきます。特に「人ザイ」の4つのタイプの解説と、それを組織作りに利用した「FFS理論」については受講生の興味が集中しました。また、上司として判断を下さなければならない仕事は全体の10%で、90%は「部下が“今日も職場に行きたい!”と思える環境づくりだ」とのお話も印象的でした。

後半は「モチベーション」。井上さんは、モチベーションを「目標の魅力×達成の可能性」と定義し、前半の授業同様、その内容を一つずつ解説。特に「集合知」と「衆愚」に関しては、後で受講生から多くの質問が寄せられました。
その上で、再び旅の例えに戻り、「現在地点(達成度)の認識」と「活き活きとした場づくり」も大切であるとまとめ、最後に、それでは「良い旅を!」との応援メッセージで締めくくってくれました。
定刻を過ぎても質問が続き、受講生のこの講義に対する関心の高さと置かれている立場の切実さが伝わってきました。また、「会社で管理職研修を山ほど受けたが、今回の講義が一番良かった」との受講生の感想もあったほどで、井上さんの講義の充実ぶりが伺えました。

第8回  2011.2.7(月)

1:パワーアップ/トレンドスキル    粟田恵吾(株式会社博報堂)
2:クロージング

第2期の最終回は、博報堂イノベーションラボの主席研究員、粟田恵吾さん。トレンドスキルとして「未来変化の兆しを“直感”でつかむスキャニング手法」について、ワークショップを交えてお話いただきました。今回は未来洞察の基本フレームのうち、この「スキャニング」という手法だけを体感する講義となりましたが、本来は一般的に行われているインサイド・アウト的な発想法「未来イシュー」と、アウトサイド・イン的な発想法であるこの「スキャニング」を組み合わせて未来洞察を行うそうです。
論理的、演繹的、仮設検証的なインサイド・アウト発想法では、ありそうな未来、想像の範囲の結論しか得られないのは私たちも実感しているところ。粟田さんは、滅多に起こらないが現実になった時にはインパクトの大きい要因を想定しておくことが重要、つまりインサイド・アウト的仮設の外にある「兆し」をキャッチし、「想定外の社会変化」に備えておくことが大切であると説きました。
その後、事前に準備されたマテリアル(記事)をもとにして、4~5人のチームに分かれてスキャニングの手法を使い「想定外変化仮設(スキャニングクラスター)」づくりを体験。約1時間の実習の後、4つのチームから非常に興味深い未来の姿の発表がありました。
受講生からは、この手法を本格的に勉強してみたいとの声も寄せられ、インパクトの強い講義となったようです。

講義の後、主催者がクロージングの挨拶をし、一連の講義を終了しました。その後は粟田さんにもご参加頂き懇談に。短い間でしたが共に学んだ受講生の輪は強く、また名残惜しさも手伝って、この日も遅くまで意見交換が続きました。